(どの請負額も億単位・・両県総額600百億にも及ぶ超巨額工事だ)

 

 私の広報紙『地域の皆様と共に』でも度々取り上げている県境産廃と当市の関わり。だが青森・岩手県境の話でもある為、馴染みの薄い読者も少なくないのではあるまいか?本題の前に本件に係る今までの概要を簡単に述べておきたい。

@:青森・岩手県境の高原地帯で国内前代未聞級の産廃不法投棄問題が勃発した。発覚から10年以上経った今尚、汚染は拡大し続けている。

A両県では総額500億以上の巨費を投じて対策にあたっている。事業を大別すると・・・【1】産廃処理、【2】周辺の汚染土壌の洗浄&浄化・・・の2つに分けられる。

B土壌洗浄事業に関しては、当市に国内認可第1号、第2号という全国でも先駆者的2施設がある。先述【2】に関しては県境の現場から当市の施設は最も近い。

 

(掘り起こせば至るところうした廃棄物の山なのだ)

 

(ストックヤード。周囲には凄まじい薬品臭が立ち込めている)

 私も所属する『北東北若手議員の会』では本件を緊急の重要課題と位置付け数多くの議論を交わしてきた。18年2月の同会定例会は大館市で開催された。目的は当初PFI方式ゴミ焼却場の現地調査とされたが、幹事の私は「その件については前回の大館開催で小畑市長から講演をしてもらっている。今回は土壌洗浄に論点を絞りたい」と内容の全面変更を決意、同会会長の工藤岩手県議から了承を得た。視察先は関連2工場とし、観光まがいのドーム見学などは一切予定から外した。工場で視察ガイドをして下さったのは企業の社長であった(施設内での講習の講師も兼任して下さり、質感のある説明を懇切丁寧に受ける事ができた)。市庁舎では小畑市長を講師に迎え多くの質疑が交わされた。岩手県議からは『こちらで当方の汚染土壌の処理をお願いできないか?』といった爆弾発言?もあったが、市長は『危険なものは断る。当方はあくまで洗濯屋、最終処分場ではない。』とこれらの質疑をかわした。

 18年3月の一般質問で私は「当市から2時間あまりの美しい高原地帯で汚染土壌による深刻な環境汚染が今尚進んでいる。対岸の火事と傍観せず、当市が協力できるか検証すべく専門家を派遣して議論を始めるべきだ。近い将来当市に必ず打診がある。その時に右往左往するのでは遅い」と質した。市長は当局が用意した答弁書を読む事なく、持論を展開し、「中身と量がハッキリしないものについて論じる事はできない。そういったものが当市に来るという相談もないし、想定は一切していない。」と括った。

 翌月の4月9日、市民団体主催で同事業を考える学習会が行なわれた。後半の質疑応答で私も発言を求められ、現地の人達は一日でも早く莫大な汚染物質を片付けてしまいたいという願いを持っていた。当市企業に協力して欲しいという青森や岩手の議員達も多い。化学的な論拠もなくただ危険だから搬入反対では企業を説得するのは難しい。安全でなければ私も賛成しない。」などと述べた。

 岩手県議会では先述の若手議員の会の会長工藤県議が、県境産廃緊急特別対策室の室長に対して汚染土壌への対策を質した。これに対して「18年度、汚染土壌を現地で浄化するか、搬出して外部委託するか比較検討したい」との考えを示した。2400万を年度の実証試験費として盛り込み調査を開始したのである。岩手県では現在、汚染土壌の総量を8万3800トンと推定している。2012年まで事業を終えたい同県では期間内での事業終了は間に合うとの認識を持っている。

 一方の青森県側には昨年11月、現地を訪れた。産廃の掘削と撤去のメドもたっておらず、覆土の下20メートル以上の廃棄物などに日々頭を悩ませている状態であった。また地下水脈による汚染拡大も進行しており、県境に遮水壁を入れる工事を控えているなど、汚染土壌対策には当分移行できない事情を目の当たりにした。県境再生対策室職員に尋ねたところ、「汚染土壌の総量すら全くの未知数」と苦慮していた。

 

(汚水を集めて浄化するハイテクを結集したプラントを視察)

 

(悔しいかな私の理解を完全に超えている・・・涙)

 

(ダイオキシンを完全無害化!?○ボタ恐るべし・・)

 


 

 本件について、確かに当市へのアクションは現在全くない。市長も一切想定はしていないと言い切っている。・・・だから現時点での議論は全く必要ないのか?果たして本当にそうだろうか?

 数年前視察した時も、今回視察した時も「大館さんでは全国の汚染土壌を引き受けて大変な量の処理事業をされておるとか・・・」なる意見を数多く受けた。関係者の間で大館の汚染土壌処理を知らない者は皆無と言っていい。現地から一番近い当市企業に頼まずに、5〜10倍・・いや、それ以上離れた遠隔地にある他地域の企業までわざわざ高いコストを投じて汚染土壌を一体誰が運搬するのだろう?運搬コストだけでも何億という違いがある=入札になっても一番アドバンテージがあるのは大館の企業なのだ。産廃処理にしても岩手県側からは廃ドラム缶をはじめとする多くの廃棄物が以前大館に運びこまれた。青森県側など現在も、当市企業の系列である小坂町の施設に大量の廃棄物が持ち込まれている。さあいよいよ汚染土壌の番ですとなった時に、果たして「今までの委託契約など一切関係ありません、他にお願いしますから。」となるだろうか?少なからず両県と市内企業の間には、見えない縁・・信頼関係が既にできていると思う私の考えは偏見だろうか?当市への搬入など一切想定していないという市長の考えの方が一般論なのだろうか?

 土壌汚染対策法施行以前から当市企業は操業を始めている。民間企業の商業行為が法令の整備に先立っていた為、当時は騒ぎにすらなった。それだけ当市企業は時代を先駆していたし、その知名度は絶大だ。運び込まれる総量は年間数十万トンという規模で、11年操業開始以来増える事はあっても減る事などないのが現状だ。定例議会の度に審議される事前協議願いの束、以前は数ページのものが今では厚い冊子のようだ。そこで働いていない私達にとっては地元であっても今ひとつ馴染みの薄い工場だが、汚染土壌の洗浄事業に関して同企業は全国的にも超メジャーなのだ。企業の公約通り、約7年半の間、事業に起因する軽微な環境汚染は1件も発生していない。それは企業の高い技術力を証明していると言っても語弊はない。近隣にあるこの一流企業を両県が無視する事などあり得ないと言い切ってしまうのは果たして早計であろうか?

 また、当市で巻き起こっているのは両県の態度待ち・・みたいな受身論だけではない。一般質問でも触れたが、当市議会では幾度か『受益者応分負担論』についての議論が交わされてきた。「大館圏域の住民が負担するリスクは大きい、洗浄する企業ではなく、持ち込みを依頼する企業や自治体に対してトン幾らといった汚染土壌持ち込み料的応分負担を求めたらどうか?」なる意見である。私はこれには全くの同感である。議員提案でこうした意見を条例化できるのであれば直ちに取り組むべきである。入札の際に当市企業が不利になるという意見もある。以前何かの酒宴の折に市長に聞いてみたところ、「せっかく全国一の企業になったばかりで・・・」といった消極的なホンネを漏らされた事があった。だが、リスクを負っている圏域住民はどうなのか?

 「通るなら金を払え・・みたいな関所論的な考えは同事業の是非を論じる本質からズレている」という人もいる。しかし住民合意があって初めて議会は事前協議願いを異論こそあれ受け入れてきたのだ。下流域の住民や営農者達は放流水に対して常に不安を感じている事と思う。それでも地域発展の為、自分の気持ちを抑えて同事業に賛意を示しているのだ。そうした人達の為に行なえる事業は無数にあるハズだ。例えば・・放流水の水質検査一つとっても毎日検査をしているのは洗浄事業を行なっている企業の系列会社だ。信用していない訳では決してないが、云わば身内の調査でも排水基準の10倍厳しい環境基準を時折上回っている数値がデータから散見されるのが現状である。こうした水質検査を市が独自に行なえれば・・抜き打ち的に不定期に行なえれば・・安全に対する信頼性は今より飛躍的に上がると思う。また、トン幾らといった僅かな料金でも年間を通じればかなりの額になる(トン¥100で年間50万トンとした場合・・年5千万)。下流域の地域の農業振興支援や会館整備、道路改修などのエリア限定の生活支援費用に充当しても、他から「何でそこだけ」といった異論は出ないと思う。そうした目的を特定した料金賦課も話し合っていけるハズだし、鉱山時代、地域と一体となって生きてきた企業も快く応じてくれるものと心から期待をしている。

 市当局でもこの議論についての検討をしている。これからの方向性を議論する政策協議について以下の見解を示している・・・・

課における政策課題

 「特定物質」の搬入・処理の事前協議に対する手数料の徴収について

 環境都市として、リサイクル産業の健全な発展と、地球環境保全の両立から、環境調査の実施、水質調査の実施などを行い、安心安全なまちづくりに資するための財源とすることを検討する。〜搬入元原因者負担とする。

 @手数料徴収のための条例の改正(大館市環境保全条例)

 A調査体制の強化、充実を図る。〜県内自治体の取り組み状況を見ながら検討及び実施

 ・・・・この当局提案を議会が早急に議論して実現する事を願う。

 


 

 最後に一番言いたい事は、事業の是非を論じる最も重要な論点は『安全性の検証』である事だ。これは先述の手数料徴収による経済効果よりも何よりも最優先されるべき事項である。

 (一般質問でも述べたが)同事業について可否を審議するのは議会や当局だが、資料にある様々な物質についての化学的な専門知識や害毒について論じる事ができる者は市長、当局、私を含む議会の誰一人いない。つまり、審議議する側に安全性を検証できる者が誰一人いないのだ。これは同事業を懸念する市民団体の人達も同じであろう(例外・・昨年の彼等の学習会では工学博士の方が講演しておられた)。それ故私は専門化を一定期間招致して、企業の施設は勿論放流水を排出する河川や圏域を精査して、施設や圏域の環境がどれだけの負荷に耐えられるのか今すぐ検証するべきだと訴えた。全国に先駆けた事業である為、先進事例やデータなど一切ない。こうした事業を続けて当市が数十年後どうなったか?・・というのが全国で初めてのデータになるのだ。

 県境の莫大な汚染土壌の搬入・洗浄は当市への負荷の超一極集中でもある。安全性の検証なくしてこの数十万トン〜100万トンの汚染土壌を持ち込む事について私は警鐘を鳴らしたい。市長は「中身と量の精査が前提条件」と答弁しており・・・これは正論であるが、この「精査」を一体誰がするのかが問題である。青森・岩手両県の調査では中身と量が特定できても、当市圏域の環境に受け入れ能力があるかどうか検証できるのは彼等ではないからだ。

 『閉山していたヤマに再び灯がともった』・・・とは市長のオハコであり無断引用は恐縮だが、同事業で企業は息を吹き返したどころか、最盛期の頃の賑わいを越える勢いで連日フル操業の状態である。同事業は圏域環境産業のコアと呼んでもいいだろう。私はこうした新規ビジネスによるふるさと活性化は素晴らしい事だと思うし、全国各地の汚染土壌に悩む企業・自治体の救いの手となって欲しいと心から願う。 

 だが一方、「際限なく汚染土壌を受け入れる事での環境への危惧」も確かに介在するのだ。推進、慎重・・様々な意見が交錯する中で県境土壌搬入のXデーは確実に迫っている。企業論理優先でもなく・・論拠を示せずただ反対とかでもなく・・毅然たる姿勢で同問題に取り組む事が強く求められていると私は思う。環境汚染は驚くほど静かに・・そして確実に忍び寄る。高度成長時代じゃあるまいし、この環境重視社会の中では健全な議論と取り組みにより、そうした不測の事態を必ず避ける事ができるハズだ。現在、この問題を議論する私達にはこれから生まれる市民に対する責任もあるのだ。

 当市で始まった「汚染土壌洗浄事業」という新しい環境産業。これは全国各地の救いとなる未来への資産だ。だが、同時に償いきれぬ汚染を生み出す未来への負債となるリスクもはらんでいる・・・それを防げるのは同事業を取り巻く私達全員の健全な姿勢である。                                         

                   2007年1月 著