
(豪雪時の明石宅。4WD以外訪問不能)
1:議員の会提案書提出までの回顧録・・私の場合
【序章 議員の会設立までの回顧録】では16年初夏から17年1月までの動きを舞台裏を交えながら書き記した。ここでは17年6月までの激動の5ケ月間をドキュメント形式で検証する。【2】の現況考察に先立ってこの【1】を読んでいただく事により、フローチャートのように、竹村跡地利活用に関しての議会や地元での議論の流れが明瞭に把握してもらえると思う。
1月26日に『中心市街地活性化を考える議員の会(以下議員の会)』が設立されてから10日あまりの2月7日、同会幹事会が召集された。今後の活動内容を協議する為である。設立当初の呼びかけ人8名(花岡、八木橋、石田、佐々木、松橋、桜庭、田中、明石)に伊藤座長と岩谷議員を加えた10名が当会の幹事に選任されていた。政党で括れば自民、共産、社民、やや民主、無所属の「超党派」と呼んで遜色ない顔ぶれになっていた。
何よりもまず優先すべき事項は@現在の旧竹村ビルを視察する事A地元商店街との忌憚ない意見交換をする事・・・この2点であり、直ちに全議員と商店街に対して案内状が送付された。当時大町地区の商店主らに対して送付した文書を下記に添付する・・・・
平成17年5月9日 『中心市街地活性化を考える議員の会』伊藤 毅大町商店街振興組合 御中
旧竹村店舗視察と意見交換会のごあんない
拝啓、緑萌える陽春の候、皆様におかれましては日々ご清祥の事とお慶び申し上げます。平素は当市行政に格段のご高配を賜りあつく御礼申し上げます。
さて、当会では設立後の当面重要課題として『旧正札竹村跡地の利活用問題』を取り上げ精力的に活動を展開して参りましたが、今月中旬をメドに本件に関わる一定の意見集約を図る所存でございます。市長・市当局も「始めに改修ありきではない」との柔軟な姿勢を示し始めております。
つきましては、再度旧竹村店舗を視察致したく誠に勝手ながら下記の通り現地視察日程を決定致しました。厳冬期の状態との差異を確認し、また意見集約に先立って改修の可否の最終判断の一助にしたいと考えております。当日は是非お一人でも多くの地元商店街の皆様と同行の上、店舗跡地の視察を行いたく謹んでご案内申し上げます。視察終了後、近くの『ハチ公プラザ』にて会員と地元皆様との意見交換の時間を予定させていただきましたので、同席上にて忌憚ないご意見、ご要望を伺いたく併せてご案内申し上げます。当日はどうぞよろしくお願い致します。敬具
・・・・この視察に先立って、市では「旧正札竹村ビル再整備プロジェクト会議」が開かれていた。リニューアルなど数パターンについて経費を試算し、現況把握の為専門家による調査の必要性などが議論された。1月に大館商工会議所と大館市商業連合会が新市の公共施設として同ビルを利活用するよう市長に要望書、市議会には請願書を提出(私も署名議員の一人となった)した経緯もあり、市長は同ビル再活用を17年度の一大プロジェクトに位置付けていた。2月の定例会見で市長は「ビルの利活用についてはできるだけ早く取り組みたい」、「まずはビルを取得できるかどうか債権者と話し合いたい」と積極的な姿勢を打ち出した。また時を同じくして地元大町では、「旧正札竹村を市民活用の場にしましょう」とのスローガンで目標1万人の署名活動をスタートさせていた。さらに2月中旬には、市の商工課と大館商工会議所の市街地活性化をテーマとした意見交換会が開かれ、利活用実現に強い要望が出されると同時に「地元の熱意に期待している」などの意見が交わされた。
(こうした各方面からの一気呵成と言える数々アクションが市長の政策転換を促していったのは間違いない。16年の商店街との会談では「市営住宅と竹村はハッキリ分けて考えたい」、また同年9月議会の総括質疑では「解体費を考慮すれば旧竹村跡地での公営住宅建てかえは困難」と言い切っていた市長の見解は数ケ月で大きく向きを変えたのである。)
・・・・当時の旧竹村ビル視察には21名もの多くの議員と市当局、地元商店主らが参加した。倒産後初めて入るという地元の人も多かった。私が幾度も訪れていた2年前より建物の劣化は更に進んでおり、視察した議員からは「リニューアルは難しいだろう」との声が相次いだ。廃墟とも呼べる同ビルを数十人が視察した様子は地元紙にもならず県内テレビ各局により大きく報道された。視察後は地元商店主ら25名を加えた46名で意見交換が取り交わされた。この時の地元の意向はリニューアルでの一日も早い再開が大半を占めた。
旧竹村ビル視察から半月ほどした3月8日、地元商店街と招いて当会幹事会が開催され、同ビル再活用事業の早期着手への強い要望が地元から出された。だが、当時の私の考えと地元商店街との認識には大きな温度差があった。先述の通り、地元の意向はリニューアルによる同ビルの一日も早い営業再開であったが、私は15年の頃から解体論を展開している。同僚議員達にもリニューアル派はごく僅か・・というより皆無に近かったと記憶している。専門家による詳しい試算は当時されていなかったが、解体には3億〜3億5千万かかるだろうと言われていた。一方、リニューアルには使用する階層にもよるが、2億〜4億・・・発電設備の全館復旧も合算すれば5億以上要するというのが一般的な推測であった。
解体新築の場合・・除却費に3億かかると試算した時、国交省の『優建』補助が運用できれば最大で国1億、県1億の補助が見込め、事業者は1億での除却が可能になるとの想定ができた。一方、リニューアルに対する補助は当時全くないと言われていた。更に『優建』運用で新たに建設する建物が20億と試算した場合、国1/3、県3/30、市7/30の補助が見込め、事業者は何と1/3の7億強での建設が可能というトンデモない優遇制度であるのだ。この数字を見ただけでも2〜5億かけてリニューアルした方が良いなどという意見の、B/C(費用対効果)での整合性が一体どこにあるのか全く理解に苦しむというのが私の見解だった。地元の大多数の要望がリニューアル論でも、私は解体論に大きな自信を持っていたし、自分が少数派でも間違いだとは到底思えなかった。だから当時から18年年末の現在に至るまで私は一度もリニューアル論を展開した事はない。15年年始にあの廃墟を何度も歩いて「このビルは二度と使えない。万感の謝意を込め跡形もなく葬り去る事がこの地で育った私の恩返しだ」と痛感したあの日の気持ちは、今でも何ら変わるところがないのだ。
3月から5月にかけてはバスを使っての遠征が3度もあった。伊藤座長の強い要望により、先進事例地での視察研修が行なわれたのだ。
@能代市・・・市が建設した複合施設併設型市営住宅『能代ふれあいプラザ サンピノ』。総事業費25億(うち国県補助4.6億)、市営住宅40戸、デイ・サービス・センター&保育所&子育て支援センター&在宅看護支援センター&在宅看護支援事業所&高齢者支援センター&社会福祉協議会&ボランティアセンター&ヘルパーステーション等々併設という超スゴイ内容。もはや市営住宅というより能代圏域の福祉の拠点。起案者が職員というのも特記事項。当時は斬新過ぎて東京の設計者に「実現不可能」と言わしめたスグレモノ。また、住宅入居に関しては抽選以外に「子供は何人いる」など少子化への貢献度を勘案するなど非常にユニーク。年額2,000万弱の繰入金があってもこの内容では誰もが納得。
A大仙市・・・市が建設した県内では先駆者的な複合施設併設型公営住宅。総事業費22億(うち国県補助11億)、市営住宅80戸、社会福祉協議会&在宅介護支援センター等併設。
B弘前市・・・民間事業者が建設した住宅を市が借り受ける『借り上げ公営住宅制度』を導入した事例。総事業費3.2億(うち国県補助0.86億)。市営住宅30戸、保育所併設。坪単価30万の激安プライスは民間ならでは?
私の印象では@がインパクト抜群であったが、Bの低コストでの民間建設も秀逸であった。一般質問でも述べたが、竹村跡地にこうした多機能住宅ができる事のメリットは尽きない。増改築で新しくなる病院に近く、商店街に位置する住宅の利便性はここで言うまでもない。また、介護や看護施設を階下に備えた住宅は、健常者の方も将来への不安なく暮らしていただける他、高齢者を抱える世帯にとってはこれ以上ない居宅支援にもなるからである。商店街にとっても多くの施設への来所者がまちの賑わい創出に直結するだろう。商業施設や映画館などアミューズメント施設併設での若者の集約などアイディアの裾野は無限大だ。多くの民間事業者にはその数だけ提案があるだろう。
こうした先進地事例の視察を終えた議員の会は5月、再度旧竹村ビルの視察と地元との意見交換(参加議員18名、地元20名)に臨んだ。議員の会が提案書に添付した意見交換の報告書を下記に記す・・・・
地元商店街との意見交換会 概要
※伊藤毅当会座長
@市長とは詳細について話し合いを行っている。現在取得を求めて管財人と交渉中。Aあくまで大義は中心市街地活性化、どうすれば目的を達成できるか皆で考えたい。B5日後の16日には全議員で意見集約を図りたい。C課題は中心市街地の定住促進。合併前に基本の部分はまとめておきたい。Dビルのリニューアルでは補助メニューが乏しい。E特別委員会の設置は見送りたい。
※金澤邦男商店街振興組合理事長
@署名活動は10,000名を突破する事ができた。A他市の活性化成功事例を積極的に学んで成功につなげたい。B明確な目標があれば募金活動を行ってもよい。C最後の機会であるとの認識で全力で取り組みたい。
※参加した議員達から
@大町だけが中心市街地ではない。公金投入には慎重を期すべき。Aまずは購入が前提。あまりに値が上がれば取得は難しくなる。Bリニューアルには疑問。やるなら解体した後きちんとしたプランで建て直すべき。Cまずはシャッターを開けて欲しいのような話しではおかしい。D取得の為の募金活動には疑問。大町として気概を見せる時ではないか。
※参加した商店街振興組合員達から
@大町には歴史的、文化的にも価値があり、再生を望む声は強いはず。Aアーケードやカラー舗道の整備事業には補助をもらっていない。B大町再生の最後のチャンス。にぎわいを取り戻す為に再興を実現したい。C跡地再活用にあたってはある程度の負担を地元としても考えなければならない。D生活密着のスタイルが大町にはあり、公共のスペース、集会所、高齢化対策などを考慮しても、是非正札跡地の取得を行政にお願いしたい。E確かにリニューアルで要望したが、現在はビルを解体しての建て直しが商店街のコンセンサスである事を議会のみなさんにわかっていただきたい。
・・・・特記すべきは、この5月11日の時点で地元の要望がリニューアル論から解体建て直し論に大きくシフトしている事だ。私は議員の会の活動の最大の功績の一つがここにあると総括している。
(地元議員だけではなく、全市内の多くの議員達の関心が竹村跡地に注がれ、厳しい意見を含めた沢山の叱咤激励や同ビル利活用への賛意が寄せられ・・・そして多くの議員達が提唱した解体建て直し論が、市長の政策転換や地元要望のシフトを促したのだ。)
この地元との意見交換会をうけ数日後の5月16日、提案書の提出を目前に控えて議員の会全員協議会が行なわれた。出席議員27名中23名・・・任意の会なのにスゴイ出席率であると私は思う。賛否を問わず多くの議員がこの利活用問題に関心を寄せていた。事務局の立場から本会議場での同僚議員達の熱弁を聴いていた私は、会の設立当初、「地元議員だけでは絶対うまくいかない」という意見に賛同して全議員が加入してくれた事を思い出した。議員の会は提案書をまだ提出してはいなかったが、この時点で既にその存在意義を十分に証明していた。その時交わされた意見を要約したものが下記である・・・・・
当会全員協議会での意見集約
※賛成及び意見を附しての賛成
(以下旧竹村ビル購入に際しての意見)@建物が危険になった時、或いは管財人が不在になった時に市の責任は介在する。管財人がいる間に交渉を進めるべきで、先行取得(具体的活用案の審議を後にしても)はやむを得ない。A金額次第だが、取得はやむを得ない。B安く購入できるのであれば購入すべきである。Cリニューアルは不可能である。跡地利用を明確にしてから事業を進めるべきである。D旧八代商店所有部分、隣接する周辺の商店を含んだ再開発計画を策定すべき。E現状は長期的ビジョンに乏しい。街区再開発の方向で議論を深めるべき。F購入後すぐに解体するのには反対。計画をきちんと策定して(解体費なども熟慮した上で)、一定の方向性を打ち出す事。G市営住宅を大町に集約させたらどうか。H補助事業に乗せられるように検討すべき。I民間事業者を募るべきである。
(以下商店街に対する意見)
@大町の頑張る姿勢が見えない。もっと具体的な活動を展開して欲しい。A公費負担におんぶにだっこではなく、自主的な募金活動を始めて欲しい。B何故大町にだけ過分な資本を投下するのかには未だに疑問が残る。C食料品店も入れた計画を。商店街全体の意向は集約されているのか。また、商店街と市民のコンセンサスは十分なのか。D安全対策と活性化の議論は併せて進めて欲しい。E賑わいは分散しても歴史と伝統ある大町には頑張って欲しい。新しい大館市のシンボル的な場所を創る事ができないか。F現地調査後に壁の落下などの実情を知り、取得の必要性を理解したが、この問題は旧正札ビルの問題に終始せず、中心市街地全体の議論の中で大町のあり方を考えるべきだ。
※取得に際しては慎重に対応すべきである
@購入後の見通しや方向づけに乏しく、市当局がどこまで踏み込んで考えているのかわからない。A大町の熱意が感じられず、(要望も二転三転するなど)長期的展望に欠けている。今後の議論を深めない内に行動すれば後に問題を残す。B旧八代商店部分なども考えねばならず、大町を含め活性化のビジョンを示すべきである。公金を投入する意義を明確化する必要がある。C商圏は変わってしまった。商店街の力も今は弱い。現状の進め方は改めるべきだ。D市は旧竹村ビルにどこまで責任や義務があるのか。方向性の定まらない今としては市の負担とリスクが大きく、『メド』を立てて取り組むべきだ。
※賛否の保留
@取得の賛否は今は判断できない。A大町地区の活性化には賛成である。B4団地建てかえ計画の方向性も合わせて考慮すべきである。C安全対策に関しては管財人に要求すべきではないか。
・・・・こうした意見の数々はその賛否を問わず、間違いなくこれからの商店街にとっての財産である。この後、幹事会にてさらに意見を集約して提案書の草稿を作成、再び全員協議会にて草稿を校正・・・こうして提案書は完成した。活動報告書やそれぞれの視察報告書、先述した意見交換会や全員協議会での意見の概要などを添付資料として綴じ込み・・・出来上がった提案書は伊藤座長らによって即日市長に提出された。巻末の「提案書」を下記に記す・・・
大館市長 小畑元 殿
提 案 書
『中心市街地活性化を考える議員の会』では、当面の重要課題として旧正札竹村跡地利活用を位置付け、積極的な活動を展開して参りました。先進地事例視察や大町での現地調査、地元商店街との意見交換会などを経た後に、各議員らの忌憚のない意見を集約した結果、以下の見解で大筋の合意を得ましたので謹んでご提案申し上げます。
一:市長以下市当局が十分に民意を反映され、市民の安全確保と中心市街地再生の為に、旧正札竹村跡地を取得して早急に安全対策に取り組まれます事に、当会は賛意を示すものであります。
一:市長はあらゆる可能性を模索しながら、鋭意尽力されておられますが、当会では旧正札竹村ビルの低予算での改修は難しいとの認識で一致しております。しかしながら解体建て直しには同ビルの除却費用をはじめ相当の費用負担が生じます事から、民間資金を活用した方策を含め様々な手法の検討を進言申し上げるものであります。これに附帯して「借上げ公営住宅制度」は勿論、県が既に提案している「優良建築物等整備事業」、また国土交通省で今月から始まったばかりの「街なか居住再生ファンド」等々、補助メニューが数多く介在する事から、早急に各補助制度の精査及び比較を始められます事を要望するものであります。
一:街区周辺にある老朽化した公営住宅4団地も建てかえ計画策定の時期を迎えております。当会では「中心市街地の定住人口の増加による活性化」と「交流人口の増加による賑わいの創出」、この二つを大きな命題として、来るべき高齢化社会に即応し得る『福祉型のまちづくり』をご提案致します。
一:主眼はあくまでも中心市街地活性化であり、取得したから終わりではなく利活用を本格的に議論するこれからが本番であります。長期的ビジョンに立った実効性のある街区再生をすべく早急に準備に取り掛かられます様、進言申し上げるものであります。
地元商店街も今回が再興の最後の機会との認識で全力で努力する事を確認しております。当会も市当局と力を合わせ微力ながら全力でご支援申し上げます。
以上、提案書と致します。 平成17年6月6日
『中心市街地活性化を考える議員の会』座長 伊藤 毅
提案書の提出の2ケ月半後(17年8月下旬)には、議員の会主催で圏域の事業者を招いての「民間資金活用での公営住宅借り上げ」に関する勉強会も開催された。商工会議所が当市と連動して勉強会を行なっているのが18年冬・・・実に1年以上前の事である。こうして竹村跡地利活用の議論は現在を迎える・・・。
To be continued・・・
(『2』へ続く・・・)